
Len / Steal My Sunshine (Version Idjut)
昼のサマーアンセムが、夜のダンスフロアでサイケデリックに覚醒する瞬間。
90年代を代表するサマーアンセムが生まれた理由
1999年という時代を象徴するサマー・アンセムとして今も語り継がれるLenの代表曲 Steal My Sunshine。カナダのオルタナティヴ・ロック・バンドであったLenが、HipHop的なサンプリング感覚を大胆に取り入れて生み出したこの楽曲は、当時のPopシーンにおいてひときわ異彩を放つ存在だった。最大のポイントは、Garage Disco Classicとして知られるAndrea True Connection / More, More, More の印象的なピアノ・リフのサンプリングでしょうね。このフレーズは、Disco特有の華やかさとどこかセンチメンタルな響きを併せ持っており、LenのゆるやかなHipHopビートと組み合わさるコトで、まるで「終わりかけの夏の午後」のようなノスタルジックな空気を生み出しています。
軽やかなPopソングに宿る幸福感
Marc CostanzoとSharon Costanzoの無邪気な男女の掛け合いヴォーカルもまた、気ダルくも心地よいドリーミーなムードをさらに強調していますね。リリックのテーマもまた象徴的で、日常のストレスや憂鬱から逃れ、友人や恋人と過ごすささやかな時間の中にある幸福感を歌っています。大ゲサなメッセージではないが、「太陽を盗む」というタイトルに込められた自由な感覚が、この曲の軽やかな世界観を見事に体現している。90年代後半という時代の空気を閉じ込めたような、肩の力が抜けたポップネスとサンプリング・カルチャーが見事に融合したナンバーと言えるでしょう。
Idjut Boysが描いた夜のDub House
しかし、このUS Promoに収録されたIdjut Boysによる「Version Idjut」は、そのポップな世界観を大胆に解体しています。イントロからして印象はガラリと一変する…深いリバーブとディレイに包まれた断片的なヴォイス・サンプルが空間を漂い、More, More, Moreのピアノ・リフはオリジナルのようなカラフルなメロディではなく、より執拗でミニマルなグルーヴの核として再構築されています。Idjut Boys特有のDub的手法により、ヴォーカルは「歌」ではなく音響素材として扱われる…低くウネるベースライン、空間を切り裂くようなエフェクト処理、そしてジワジワとフロアを支配していく反復的なリズム…こうして昼間のPopソングだったハズの Steal My Sunshine は、夜のクラブに似合うサイケデリックなDub Houseへと姿を変えてゆきます。
PopとClubカルチャーを繋ぐ12インチの醍醐味
当時このRemixは、Disco〜Houseのセットを行き来するDJにとって絶好のブリッジ・トラックとして重宝されました。More, More, Moreの多幸感あるリフをキープしながら、アンダーグラウンドなグルーヴへと変換してしまうそのセンスは、まさにIdjut Boysの真骨頂と言えますね。PopとClubカルチャーが絶妙に交差した90年代後半の空気を閉じ込めた1枚っ!針を落とせば、陽気な夏の記憶がゆっくりと夜のフロアへ溶け込んでいく…そんな魔法のような瞬間を味わわせてくれる12インチです。

